野﨑まど 『タイタン』 (講談社)

タイタン

タイタン

  • 作者:野崎 まど
  • 発売日: 2020/04/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

『食べることは仕事でしょうか』

コイオスの疑問が口から滑り出た。

「その疑問はこう問い直せる」

私は疑問に疑問を重ねる。

「“生きることは仕事か”」

2205年。標準AI『タイタン』の登場によって、人類は仕事のない生活を送っていた。人が働かなくても食べていける。むしろ人が働かない方が食べていける。そんな時代が続いていたある日、心理学を趣味にする内匠成果のもとに数少ない《就労者》が現れ、《仕事》を依頼する。その《仕事》とは、機能不全に陥ったタイタンのカウンセリングだった。

《仕事》とは何なのか。未来の社会を舞台に、もはや仕事をする必要のなくなったヒトと、ヒトに変わってすべての仕事を実行するAIの対話を通じて考える。平易な言葉とわかりやすい例示を多用した対話(カウンセリング)にはかなりおねショタのにおいを感じる。

静かな対話と旅路を中心とした、基本的にはとても真摯で真面目な思索小説なのだと思うのだけど、場面転換がことごとく素っ頓狂で、章が切り替わるたびに予想もしない方向にすっ飛んでいく。すべては作者の掌の上、いちいちひっくり返ってしまった。ちょう楽しかったです。