望公太 『異世界テニス無双 テニスプレイヤーとかいう謎の男がちょっと強すぎるんですけど!』 (GA文庫)

そう。

これはたとえるならば――

能力のインフレーションが加速し、もはや完全なる異能バトルと化したスポ根漫画のキャラクターがファンタジーの世界にやってきたような、そんな物語である。

東北の古豪、陽帝学園高校硬式テニス部、二年エース、『暴王』こと相馬王助。『コート上の造物主(クリエイター)』佐久間創を倒し、陽帝学園を全国の頂点へ導き、世界大会を前にしていた彼は、異世界に「英雄」として召喚される。

「ゴブリンにドラゴン、召喚魔術に火炎の吐息……なるほど、これがファンタジーの世界ってやつか。悪くない。悪くはないが――」

全国に比べればヌルい。

発売時にインターネットで怒られが発生した異世界テニスファンタジー。分裂するボール、真空を生むラケット、音速を超えるステップ。全国レベルのテニスプレイヤーが異世界でその力を発揮する。素晴らしい。素晴らしくくだらないけど楽しい。原作(ではない)に寄っかかりすぎだし、その割にけれん味が足りないし、明らかにわかるレベルでふざけている。そういう意味で怒られるのは仕方ないと思うけど、当時のまとめをちょっと読んだ感じ、怒ってるひとがちゃんと読んだとも思えない(噴き上がっているポイントがずれてる気がしてならない)のよね。ファンタジーよりファンタジーになってしまったテニスをテーマにしつつも、ファンタジー世界でないと成り立たない伏線を入れているのは流石、うまい。リーダビリティも非常に高いし、さくっと読める。くだらないものが好きなひと向けだと思うけど、楽しかったです。