葵遼太 『処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな』 (新潮文庫nex)

「冷めたままやるロックほど、ひとをばかにするものはねえよな」

苛立ちは、だれにたいしてのものだったのだろう。僕を責めているわけではなさそうだった。

僕は留年して、二度目の高校三年生になった。机に突っ伏して一年をやり過ごそうとしていた僕は、隣の席のギャル、白波瀬に話しかけられる。これがきっかけで、たまたま近くの席に座っていた、クラスの雰囲気に馴染めない四人はつるむようになる。

恋人との死別で、心がすっかり冷え切ったまま二度目の高校三年生になった僕が、はみ出し者たちと新しい居場所を見つけるまで。そして思い出を抱えたまま、残されたひとたちがどう生きていくかについて。タイトルはカート・コバーンの引用。物知らずなので竹宮ゆゆこみたいなタイトルだなあと思ってしまった。

ロックをテーマにしつつも、良い意味で尖ったところのない、いいやつしかいない、優しい小説になっていると思う。陰キャに優しいギャルをはじめ、かなり都合の良いストーリーラインになっているなあ、と思ったのも事実だけど、悪い気はしない。ロックなようでロックになりきれない、ストレートでみずみずしい青春小説でした。