- 作者:岬 鷺宮
- 発売日: 2020/05/09
- メディア: Kindle版
「うん。なんて言えばいいのかな……まるで……まるで、そう」
と、彼女は少し、疲れた笑顔でこちらを向き――、
「まるで――世界が終わりたがってるみたい」
同級生の葉群日和に告白された頃橋深春は、彼女と付き合うことになった。どこかほんわかした、優柔不断な日和には、ある秘密があった。聞いてしまえば、誰も逆らうことができなくなる「お願い」。彼女の持つ力が、ふたりの恋と世界のすべてを決定的に変えてしまう。
遙か彼方にある、永久に変わらない光景――。
かつて『世界』は、そういうものを想起させる言葉だったらしい。
けれど――それは間違いだ。
きっとそれはもっと脆くて、手当をしなければすぐに崩れてしまう。
そのことを、現代の俺達は誰だって知っている――。
場所は尾道、時は現代。彼女は「お願い」によって世界中の政治や紛争に介入し、その形を変え続けていた。世界を変えられる力によって世界から求められ、憎まれる彼女と、そんな彼女に求められた平凡な彼氏の恋物語。
――『世界』なんて言葉が乱用された時代がある。
自分の身の回りの狭い範囲を指して。
あるいは、自分の届かないすべてに思いを馳せて。
そしてときには――その二つを混同して、沢山の人たちがその言葉を消費した。
情報化が更に進み、「世界」という言葉は意味を変える。現在でなければ書くことも読むこともできなかったと思われる、セカイ系のためのセカイ系。新型ウイルス禍や大学入試改革に触れた最初のセカイ系物語だと思う。ある種の懐かしさをもって語られる、現在進行形の物語。これを今書くことの意味はなんだろうと考えてしまうところもあるけど、自分はとても楽しかった。識者の意見というか感想が聞きたいな。