「アレが正規勇者なら、そして今後も正規勇者でいるつもりなら、なぁんも怖かねぇ。やつらの人生にゃ、特大の縛りがかかってっからな」
「……つまり?」
「正規勇者は、正義の味方じゃねぇ。あくまでも、人類の味方であって、人類の敵の敵だ」
海上都市国家バゼルフィドルを訪れていた正規勇者リーリァ・アスプレイに初めての友人ができた。その友人エマ・コルナレスは、国の裏に蔓延る悪意に導かれ、人類の敵になった。そこにあるのは、最初の勇者の死に見立てられた、悲劇への一本道。
「終末なにしてますか?」シリーズの約500年前の出来事を描く、正規勇者リーリァ・アスプレイの物語、第二幕。政治的な思惑や悪意、それらををすべてひっくり返すだけの力を持つ「英雄」の悲しさ。讃光教会に指名され、「ステレオタイプの英雄」の人生を義務付けられてきた正規勇者の生き様を、最初の勇者と、勇者に恋した化け物の、むかしむかしの悲劇に見立てて描いてゆく。世界に必要とされる無敵の「英雄」と、そんなものクソくらえと足掻く「凡人」の姿が胸に迫る。シリーズには珍しい、ほのかな希望が見える終わり方もとても良かった。ここ数冊ではベストだったと思います。