小林一星 『シュレディンガーの猫探し』 (ガガガ文庫)

シュレディンガーの猫探し (ガガガ文庫)

シュレディンガーの猫探し (ガガガ文庫)

  • 作者:小林一星
  • 発売日: 2020/06/18
  • メディア: Kindle版

「世にも奇妙なこのミステリー。不可能にも程がある荒唐無稽な不可能犯罪。私がこの手で何としてでも――――迷宮入りにしてみせよう!」

夜空いっぱいに広がる、全天の星。時間の概念が消失しなければ見られないはずのそれを、僕の妹は見たという。僕は、文芸部員の同級生に紹介された探偵に、この「謎」を打ち明ける。だがその少女は自分が真実を求める「探偵」ではなく、謎や事件を迷宮入りさせ神秘を求める「魔女」であるという。

第14回小学館ライトノベル大賞審査員特別賞受賞作。語られる事件は、平成最後の三十六重密室事件、令和最短のアリバイ崩し、令和最初の迷宮入り。タイトルからSFかと思ったら、純然たる(?)新本格日常ミステリだった。

「魔女」焔螺と対峙する「名探偵」は、平成最後の高校生探偵明智に、ハードボイルド探偵金田一。JDCだとか、講談社ノベルスや講談社BOXを思い出させるノリで、いかにも京都在住作家らしい作風だと思う(偏見)。適度なけれん味をまぶし、思わせぶりな設定を書き散らかしつつも、無難に一冊にまとめている。よいエンターテインメントでした。