伊崎喬助 『董白伝 ~魔王令嬢から始める三国志~2』 (ガガガ文庫)

「では、そなたの申す義とは何によるものか」

「民。民なくして国家なく、民なくして政もなく、民なくして義は立たず。我は民より義を受け生まれ、義を施し刺す刃なれば」

「……ならば朕は、天意ではなく民意をもって帝たりうると?」

「然り、にございます」

「耳慣れぬ訓えだが、不思議と馴染むものがある」

幼くして死ぬ運命を変えるため、奮闘する董白ちゃん。董卓亡き今、権力を狙う董璜と董旻によって、劉協こと後の献帝の後宮に入れられそうになったり。劉備たち三兄弟を味方に引き入れようとするも、「義」によって動いていないことを見抜いた関羽の逆鱗に触れ殺されかけたりと、どんどん追い詰められてゆく。そんな折、反董白連合に趙雲子龍がいることを知った董白は、敵陣へ自ら赴いてスカウトを試みる。

転生したら魔王の孫娘だったでござる、第二巻。己の生存のために動き、失敗続きだった董白が「義」を知る。董卓の計画していた長安遷都の利用。劉備の「仁」と、関羽の「侠」の違い。伝国の玉璽。形を変えた三顧の礼。中華における皇帝の立場と期待される役割。いろいろやり尽くされたであろう三国志という題材をうまく換骨奪胎し、けれん味を加えつつ落ち着いたエンターテインメントになっていると思う。英傑たちの個性的な怪物っぷりもそれぞれにしっかり出ているし、むしろひとりだけ性別転換されてる馬超が浮いている。三国志に詳しくなくとも、というか詳しくないほうが楽しめるのかな。転生ものだとなかなか手が伸びにくいひともいるだろうけど、あまり気にせず読まれるといいなと思う。引き続き楽しかったです。



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