初鹿野創 『現実でラブコメできないとだれが決めた?』 (ガガガ文庫)

「……と、まぁ。理想郷には手が届く、だから手を伸ばす。言っちまえば本当にそれだけだ」

誰よりもラブコメを愛する男、長坂耕平。「現実をラブコメにする」ために、データ収集と日々の調査で耕平は現実を作り替えることを宣言する。

第14回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞作。昨年の草野原々とはまったく違うアプローチで、ラブコメについて語るメタラブコメ。ここ数年のラブコメを多分に引用しており、読者の最近のラブコメに対する教養や、ラブコメ観あるいは世代を試すような作品になっていると思う。ステレオタイプをテーマにして、ステレオタイプを描いているけど、そういう意味では読者によって受け取り方がだいぶ変わりそう。そもラブコメの定義とはどのようなものであり、「物語」とはなんなのだろうか。描こうとしていることは草野原々と実はあまり変わらないのかもしれない。そうでもないかもしれない。見た目よりも意欲的な作品だと思うのです。



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