九岡望 『地獄に祈れ。天に堕ちろ。2 東凶聖餐』 (電撃文庫)

――そんなに開いて欲しければ、開いてやる。

ミソギはそのまま、燃える錠眼を開いた。頭の芯に疼痛、先鋭化する意識、鼻先に感じるこの世ならぬ風の匂い。眼窩から赤黒い血がこぼれ出る。ミソギ自身の血か、それとも繋がった地獄の底から湧き出る血か。

開眼/跳躍/――転送!

霊破11年の年末。東凶に現れた亡霊兵器により、一晩にして多くの命が喪われる。時を同じくして、本物の「死神」、火楽木蓮が十年ぶりに目を覚ました。

死神の役割とは、最期の願いを叶えること。通称「死神」と本物の「死神」が手を組んだ。ロンドン塔の特務機関やロシアの亡霊兵器まで、東凶で大暴れ。クランチ文体やタイポグラフィを使い、フリークスめいたエージェントたちの強さとスピード感で物語をグイグイと引っ張りつつ、「死神」の本当の願いを描く。笑わせてエキサイトしてちょっと泣かせる。最強のゲストキャラが登場したときの劇場版アニメみたいな、あるいは劇場版冲方丁というか。エンターテイメントらしさを全部詰め込んだ、最強の一冊ではないかと思う。ちょう楽しかったです。