- 作者:赤月 カケヤ
- 発売日: 2020/10/02
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
「たとえ、嘘でも、好きだと言えない」
なんで? と僕は思わなかった。
彼は僕と同じだ。だから、痛いほどにその本心がわかる。
夏の終わりの頃。失恋のショックで茫然自失中の僕は、少女の幽霊に取り憑かれる。記憶のない天真爛漫でおせっかい焼きな幽霊は、人付き合いの苦手な僕の日常を変えてゆく。彼女に少しずつ惹かれてゆく僕にはしかし、彼女に好きだと言えない理由があった。
彼女が僕にくれたものと、僕が彼女から奪ってしまったもの。僕と幽霊少女の出会いと別れを描いた青春小説。諦めと打算、許しを特徴的に描いた、苦い成長の物語。「僕が彼女を殺した」と出てきて身構えたけど、作者プロフィールにあるとおり殺人とかの話ではなく、それでいて露悪的でじわじわと胃が痛くなる、人間関係の話になっている。決して快いだけでなく、むしろ苦味のほうが強く残い。手法を変えている印象はあるのだけど、作風というか作家性というのか、そういうのが強く出ていると感じた。