枯野瑛 『終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? #09』 (スニーカー文庫)

「自分の好きなものばかり守ってて許されるのは暴君と、あと、お話の中の主人公だけ。嫌いなものも守るつもりでこその守護者でしょ」

「しかし、それは」

獣人は一度、大きな顎で唾を飲み下し、

「とても高潔な、いえ、高潔すぎる考えです」

大げさなことを言い出した。

貴翼帝国で起ころうとしていた内乱。その中心には「青鷺姫」と呼ばれる貴族の令嬢の思惑があった。悪と悪の食い合いに翻弄される、姫と騎士と英雄の物語。

自分たちは、戦いを義務付けられていない、最初の世代の黄金妖精(レプラカーン)だ。

そして、きっと。

自らの意志で戦いを選ぶ、最初の世代の黄金妖精(レプラカーン)となるのだろう――

兵器としての役割を求められなくなった妖精たちは、ふわふわした気持ちのまま日々を送り、人間のように成長していた。それから5年。二人の少女は戦場に送られることになる。

「英雄」となった少女の活躍と、「最後の決戦」へ向かう幼い妖精兵たちの決意を描いた短篇二編。「終末」がテーマだけあって、今までも風刺は含まれていたのだけど、今回は心なしか多め、かつストレートに気持ちが込められた気がする。エンターテイメントは時事ネタと風刺をぶちこんでナンボ。良かったと思う。