二月公 『声優ラジオのウラオモテ #03 夕陽とやすみは突き抜けたい?』 (電撃文庫)

あぁ。なんて、格好悪い。情けない。恥ずかしい。なんで。辛い。もうやだ。

弱音が溢れるように、涙がぽろぽろと流れ始める。

目をぎゅっと瞑っても、次から次へとこぼれ落ちていく。

枕営業疑惑や学校バレといった声優生命の危機をなんとか乗り切ったものの、新しい仕事になかなかありつけないやすみ。そんな折、ついにありついた仕事は、ベテラン監督の新作で、夕陽のライバル役だった。思いがけない抜擢に意気込むやすみだったが、監督やベテランの声優たちに圧倒され苦しみに苦しむ。

高校生声優がぶち当たった一流の壁。声優の才能と仕事の物語、第三巻。同級生、ライバル、仕事仲間、ファン、プロフェッショナル。ひとりひとりの関係に、様々な温度とベクトルが同居している。ただ優しいだけの関係は存在せず、簡単には馴れ合わない距離感がとても心地いい。基本的にこじれているという印象は変わらないけど、そこも含めて王道を感じる。巻を追うごとに良いものになっていると感じました。