二語十 『探偵はもう、死んでいる。4』 (MF文庫J)

「いいか。俺たちの世界では常識とか葛藤とか足踏みとか、そういうテンポが悪くなりそうになる要因は全部すっ飛ばす方針でいくって決まってるんだ」

「俺たちの世界ってなに……? 突然なんの説明が始まったの……?」

「いいからついてこい。俺たちの物語(せかい)のスピードに」

世界の敵を倒すため、死んだ名探偵を取り戻す、君塚君彦はかつてシエスタと暮らしていたロンドンに夏凪渚と向かう。そこには《調停者》のひとり、《巫女》がいると言う。その道中の機上で君彦は四年前と同じ言葉を聞く。「お客様の中に、探偵はいらっしゃいませんか?」

世界の敵は、名探偵(あたし)が倒す。あれから四年、地上1万メートルから再び始まる。姿を現す世界の敵、そして探偵代理から《名探偵》へとバトンが渡る。やはりミステリというより特撮ヒーローものに近いかもしれない。二巻を読んだときの「やりたい放題」という印象と語りのけれん味はあるものの、野放図に広げた感のある風呂敷と、作中で言及される通りの展開の速さ(というか言葉足らず)が気になる。「死んでいる」ことが作品のエンジンであると同時に枷になっていないか、みたいな気持ちになった。