森林梢 『殺したガールと他殺志願者』 (MF文庫J)

「実を言うと、私は心のどこかで、あの苦痛を忘れたくないと思っています」

激しく同意した。苦痛は俺の根幹だから。

最愛の人に殺されたいと願う高校生、淀川水面は、死神を自称する女から、ひとりの少女を紹介される。その少女、浦見みぎりは「最愛の人を殺したい」という願望を持っていた。利害の一致した二人は、お互いが「最愛の人」となるよう、奇妙な協力関係を結ぶことになる。

第16回MF文庫Jライトノベル新人賞優秀賞受賞作。最愛の人に殺されたい/殺したいふたりが出会って築いた、奇妙な共犯関係の行方。こじらせ気味の設定は悪くないと思うのだけけど、物語中の説得力が薄い。というか、ふたりが共有する思想に共感も拒否もしにくい。いやまあそれは当たり前なんだけど、その思想を異様なものとして描きたいのか、ありふれたものとしたいのかが読み取れない。どっちにも振り切れておらず、かといってバランスを取っているとも言い難い。読んでる最中ずっと腹に落ちずにもやもやしていた。