鴨志田一 『青春ブタ野郎はナイチンゲールの夢を見ない』 (電撃文庫)

今度は咲太が言葉を失う番だった。

郁実の反応は、正義の味方として、あまりに理想的だったから……。

騙されたことに腹を立てることはなかった。

咲太を責めることもなかった。

何も起きなかったことに、誰も傷つかなかったことに、安堵の表情を浮かべただけ。

完全に予想外だ。

SNSに書き込んだ夢が正夢になるという都市伝説、「#夢見る」。咲太が大学で再会した中学時代の同級生、赤城郁実は、そのハッシュタグを見て人助けをしていた。郁実がそんな「正義の味方」になったのは、過去の咲太が原因だという。

引きずり続ける後悔と不器用な正義感からの逃避と、思春期症候群。完璧な「正義の味方」になった元同級生が抱え続けた過去の出来事と現在の事情について。大学へ進学して生活が変わり、それでも変わら(れ)ないものもある。大学へ行っても中学生のころを引きずり続ける感覚、胸に来るものがありました。