紙城境介 『継母の連れ子が元カノだった6 あのとき言えなかった六つのこと』 (スニーカー文庫)

「どうしたんですか、結女さん? はふはふ」

「東頭さん……人ってどうやったらそんな恥知らずになれるの?」

「あれ? もしかしてわたし、痛烈な批判を受けてませんか?」

正直ラブラブしてるよりギスギスしてるカップルのほうが好きなので、水斗と結女も嫌味を言い合っている状態に戻せねえかなと隙あらば思っている。(作者プロフィールより)

季節は初秋。水斗と結女は、揃って文化祭実行委員に選ばれる。クラス企画の準備のため、一緒に活動する時間が増えるなか、元カップル、現きょうだいのふたりはそれぞれの思惑を抱えて行動する。

中学最後の文化祭で決別が決定的になった元恋人同士が、高校最初の文化祭で一緒になって考えたこと。語り手を入れ替えながら語られてゆく群像劇スタイルはいつもどおりではあるのだけど、文化祭準備から本番まで、後半へ向けてどんどんスピードアップしてゆく。異なる種類の人間だったふたり、互いへの好意と嫌悪、自己嫌悪が入り交じる感情。語られる気持ちはやたらとしゃっちょこばっており実に面倒くさい。袖の作者コメントといい、強いヒロインにはもっと強いヒロインをぶつければいいみたいな姿勢といい、本当に信頼できる作者だと思う。良いシリーズだと思います。