紙城境介 『僕が答える君の謎解き 明神凛音は間違えない』 (星海社FICTIONS)

推理小説はそんなに読むほうじゃないが、もし解決篇のできない名探偵なんでものがいたら、とんだ欠陥品だろ思うことだろう――

「――え。まさか……?」

「そのまさか、というヤツだ。……凛音本人も、自分がどうやって真実を導き出したのか、わからないんだよ」

カウンセリングルームに引きこもる少女、明神凛音は真実しか語らない。どんな事件であろうと神の啓示のように解き明かしてしまう彼女はしかし、無意識下で推理を行ってしまうため、彼女自身にすらその論理がわからないのだという。クラスメイトの伊呂波は、凛音を教室に連れていくため、「彼女の推理」そのものを推理する。

無意識下で一瞬にしてすべてを言い当てる彼女の推理を、弁護士志望の少年が論理立てて推理する。『継母の連れ子が元カノだった』の作者が送る、デビュー作以来? の本格ミステリにして、本格ラブコメ。いわゆる日常の謎に、推理の推理という謎を重ねた上で、さらにラブコメに仕立て上げた、高いレベルのエンターテイメント。キャラクターもそれぞれ際立った個性を持っており、学生生活の描写なども含めてとても細やかな視点で描いているのが見て取れる。特に弁護士志望の高校生である主人公が良い意味で真っ直ぐで熱くていいヤツ。読後感のとても良い、素敵なエンターテイメント小説でした。