二月公 『声優ラジオのウラオモテ #04 夕陽とやすみは力になりたい?』 (電撃文庫)

大人っぽく、いい人だった。

それがまた辛くなる。

あんなにいい人で、実力もあったはずなのに、業界から去らざるを得なくなったこと。

悪者がだれもいないのに、苦しくて仕方がない今の状況が。

夕陽とやすみはラジオの企画で一泊二日のロケに参加することになった。先輩声優のめくると花火をゲストに迎え、仲良しっぽさの秘訣を学ぶと同時にリスナーを安心させようと目論むふたりだったが、やっぱりどこか噛み合わない。

クラスメイトで同僚、大嫌いなライバルだけど、互いを確かに尊敬している。そんな気持ちを言葉にして、伝えることで、ふたりの間のみならず様々なことが変わってゆく。それとは別に、失意のまま業界を去らなければならなかった先輩声優もいて。ふたりの新人声優の物語第四巻。同じ仕事をしながら、まったく別の関係を築いてきた三組六人の女性声優を、独特の距離感で描き出している。読んでいてお腹がキリキリしてくるような、ヒリヒリした緊張感がとても良い。リアリティラインを都合よくいじっている印象があるのがちょいちょい気になるけど、そこが見えないくらい改善されたら本当にすごいものになるのではないかという気持ちです。良いものでした。