川岸殴魚 『呪剣の姫のオーバーキル ~とっくにライフは零なのに~2』 (ガガガ文庫)

「エルフって街じゃなくて森の中の村で暮らしているイメージだったけど」

僕は素直に自分の先入観とこの街の印象の差を口にする。

「それは中流以上のエルフだ。森も村もタダじゃない。森をいくつも持つエルフもいれば、土地を持てないエルフもいる」

並んで歩くのが難しいほどの狭い通路をこちらに向かって駆けてくるエルフの少年たち。

シェイは少年の突進をひょいっとかわす。

板壁すれすれを駆け抜け、きゃっきゃと歓声を上げて通り過ぎていく。

〈屍喰らい〉に呪力を食わせるために、小さなクエストをこなしてゆくシェイたちパーティー。それに退屈を訴えるアーチャーのど根性エルフことエレミアは、パーティーを離脱し、弓の腕を競うエルフたちの大会に参加するという。一方、シェイたちの前には討伐者狩りと呼ばれる謎の脅威が現れる。

呪剣〈屍喰らい〉を駆る呪剣士と、戦場鍛冶師の少年のコンビが送るスプラッタファンタジー第二巻。オーソドックスなファンタジーでありつつも、コメディのテンポを持つ文体は一巻同様、独特の趣がある。今回はエルフの社会と生態にスポットを当てているのが良かった。エルフ社会の格差の様子や、若い見た目のまま頭の中だけ老化してゆくという、負の側面を身近、というか卑近な描写で書いている。ありそうであまり例のないエルフの描写で、良かったと思います。