オキシタケヒコ 『筺底のエルピス 7 ―継続の繋ぎ手―』 (ガガガ文庫)

いくら燈を取り戻そうが、そこは変えられない。“終わり”どころか、月の上位存在が先に目覚め、いきなり実力行使に出てきたのだから、これ以上引き伸ばしようがなくなったのだ。

千二百年以上続いてきた崑崙からの道は、昨日で途絶えてしまい、もはや歩めない。

これからは、未知なる荒野を渡っていくしかないのだ。

月に座す異性知性体に、地球上の三つのワームホールゲートが掌握された。更には、《門部》最強の処刑人、阿黍と屋内最強の狩人、霧島が敵の刺客として圭たちの前に立ちはだかる。一万九千回を超える“終わり”を経験した圭は、残った門部たち三組織の力を集結させて人類の終わりに立ち向かう。

最強の味方だったふたりの封伐員が今、最強の敵として人類の前に立ちはだかる。あるいは、人類の未来を賭けての壮大なきょうだい喧嘩。絶望の底を越え、超えるべきものはまだ高くとも、やるべきことが見え始めたかもしれない、シリーズ七巻。捨環戦と経た異界の自分との対話、そして新たな力と、クライマックスへ向けて助走をつけているように感じた。ここまで絶望に次ぐ絶望を見せつけられてきて、それでも越えてきたことに対する信頼というか、ある種の余裕さえ感じるような気がした。もはや安定の、文句なしの面白さだと思ってます。