紅玉ふくろう 『チヨダク王国ジャッジメント 姉と俺とで異世界最高裁判所』 (MF文庫J)

「……昔は、良かった……」俯き、呟く。「ただ、敵を倒していれば良かった。次は、もっと強い敵を。さらにもっと強い敵を、倒す。ゴールは、魔王城だと決まっておった。みんな、同じ気持ちで、ついてきた。その道だけ、見てれば……それだけで良かった……」

高校生のアクトは、姉ツカサの仕事を迎えに行った帰り、二人揃って異世界に召喚される。そこは日本の文化を模倣する異世界、チヨダク王国だった。東京地方裁判所の裁判官を務めるツカサは、チヨダク王国の王女エクスタシアからこの国の民を正しくお裁きするおジャッジ様になってほしいと懇願される。

かつて魔王を倒し、世界に平和をもたらした七十過ぎの老勇者。その罪を裁くのは異世界から現れた裁判官。第16回MF文庫Jライトノベル新人賞最優秀賞受賞作。コピペ魔法でつくられた王国だとか、居場所をなくした七十過ぎの老勇者の境遇だとか、光るパーツは間違いなくあるものの、それから出来上がったものは(本筋と関係ない部分も含めて)若干の古臭さを感じた。日本の法律に基づいているとは思うのだけど、こちらの知識がないのもあってか、いかにもゲーム的に簡略化された裁判は緊張感やリアリティが感じられない。法の知識を使って異世界裁判を描きたかったのはわかるんだけど、フォーカスすべきところがちょっとずれていたんじゃないかなあ、という気がしました。