三田麻央 『夢にみるのは、きみの夢』 (ガガガ文庫)

私は、いつのまにかナオに恋をしてしまっていた。

でも、ナオを想うこの気持ちの中には焦りと困惑がぎっしりと詰まっている。

……こういう気持ちって、もっと楽しい感情なんじゃないの?

ドキドキして。春みたいな風が吹いて。甘くて。……全然違うじゃないか。ココアみたいに甘いんじゃないの、本当は。

恋愛経験ゼロ、友達ゼロで二次元オタクの会社員、二橋美琴。誕生日の夜、公園でひとり酔っ払いながら泣いていた美琴の前に、ナオと名乗る青年が現れる。ナオは研究所から脱走してきた愛玩用AIだと言う。行き場のないナオと美琴はなし崩し的に同居生活を送ることになる。

冴えないOLの元に、AIを自称するイケメンが押し掛けてきて、なし崩しで同居生活が始まって。いわゆるオーソドックスな押しかけ女房ものというか、男女逆なら似たような話をたくさん読んできたが……、と思って油断していたら、仕掛けられていたSFトリックに完全に足元をすくわれた。少女漫画のお約束のような展開がかなり長く、正直退屈なところも多いんだけど、ある程度はわかってやっているんだろうな。きれいにタイトルの意味が回収されるラストは良かったと思います。