安藤白悧 『悔い改めよ!ハーレム学園』 (講談社ラノベ文庫)

悔い改めよ!ハーレム学園 (講談社ラノベ文庫)

悔い改めよ!ハーレム学園 (講談社ラノベ文庫)

  • 作者:安藤白悧
  • 発売日: 2021/04/28
  • メディア: Kindle版

この学園の掲げる基本理念は、『世界の垣根をなくす』ことである。五十年前、多数の「異世界」との交流がスタートしてから、今日まで、いまだに世界は種族の垣根を取り払うには至っていないが、この学園は、現状、数少ない、種族による制限を設けていない学校組織として一つの理想のモデルケースと見なされている。

――しかし、それは表向きのことだ。

私立シャインライズ学園。「世界差別の撤廃」を掲げて、弓坂弾正によって設立された学園の真の目的は、弓坂の血に連なる男子生徒と、様々な世界の実力者の子女を結びつけることにあった。弾正の息子のひとり、弓坂将監は否応もなくこの通称「私立ハーレム学園」に入学し、暗澹とした日々を過ごしていた。

異世界間の交流が始まって五十年、世界は弓坂弾正によって創られた「ハーレム」に支配されていた。約6年ぶりの新刊は、タイトル(元ネタは「「悔い改めよ、ハーレクィン!」とチクタクマンはいった」)や、すべての章題をハーラン・エリスンから取り、殊能将之の『黒い仏』にオマージュを捧げたという学園異能ハーレム小説。まず目に入る作者プロフィールに「理想とする世界:「殊能将之ショートショート集 Dreams」の出版される世界」とあり、殊能将之にオマージュを捧げる姿勢はデビュー作の『魔法少女地獄』から一貫している(こちらのタイトルは夢野久作から)。ここまでひとりの作家をオマージュし続けるライトノベル作家も珍しい。

そして、約300ページのライトノベルなのに、参考・引用作品が40点近いというのもかなり珍しい。あちこちにネタが仕込まれているだけに、オマージュとパスティーシュだけで出来ているかのようにも読めるのだけど、様々な異世界が交雑する「ハーレム」という概念のあり方を、ハッタリを交えつつとんでもない方向から考察している。なかなかの怪作で意欲作と言えよう。元ネタを拾って十全に面白がるには結構な教養が要求されると思うけど、読んでる最中はただただ楽しかったです。



kanadai.hatenablog.jp