漆原雪人 『異セカイ迷子の半透明とやさしい死神』 (星海社FICTIONS)

もしも未来が、セカイが、言葉でできているのだとしたら……。

では心はいったい何でできているのだろう。言葉だけでは言い表せないなら歌にする。詩にしてみたりする。物語を紡いでみたりする。絵を、描いてみたりする。そうしたたくさんの想いが、たくさんの誰かに、いつか、届きますようにと人々は祈る。

この世には数え切れないほどのセカイがある。体を持たない半透明の僕は、目の不自由な死神の手を引いて、物語(セカイ)から物語(セカイ)を渡り歩く。悲しい終わりを、幸せなハッピーエンドに書き換えるために。

様々な姿を持ったセカイを、ハッピーエンドに書き換えてゆく。死神と半透明の物語。なんとなく「キノの旅」のような印象を受けたけど、「ハッピーエンド」への強いこだわりが物語全体に悲壮感のようなものを漂わせていると感じた。帯にもあるように、ロジックよりもリリックがかなり強い。好きなひとも多いだろうけど、個人的にはちょっと乗り切れないところが多かったかな。