わたしの初恋は、かすかに煌めいていたのに、今はどろどろで、ぐちゃぐちゃで、どれだけ磨いても、もう光らない。胸の奥にある淀んだ池の中で、今も転がっている。
それは遺言なんかじゃなくて、僕にかけられた呪いの言葉だった。
僕はその呪いに抗うことの出来ない哀れな男だ。
こうして僕は、初恋の女の子と付き合っている。
私は夜鷹。
私の輝きに目を細めるが良い。高いところからなら、何でも見通せるんだよ、お二人さん。
隠れたって無駄だからね。
僕こと白崎純と、琉実と那織の神宮寺姉妹はお隣に住む幼馴染。小学生の頃からの仲良し三人だった僕らの関係は、中学三年生の春に姉の神宮寺琉実の告白を僕が受けることで大きな転機を迎える。それからちょうど一年、僕は妹の神宮寺那織と付き合うことになる。
活発な体育会系の姉と、あざとくてサブカルな妹。対照的な双子と僕の関係は不安定でいびつな三角関係を築いていく。三人それぞれの角度から語られる、双子と幼馴染の三角関係。サブカル、オタクがテーマのひとつであるためか、巻末の「引用・出典」が非常に詳細*1。伊藤計劃なんかも名前だけ出てくる。「トレッキーとシャーロッキアンには迂闊に近付いてはいけない」、「SFオタクとミステリオタクのハイブリッドなんて、誰がどう考えたってこの世で一番厄介な人種だ」なんて言われてるぞお前ら。
サブカル語りは正直鼻につくところもあるけど、まあ高校生の一人称だと思えばリアリティがある……のかな? お互いがお互いを尊重するがゆえ、迂遠で非常に面倒くさい三角関係を存分に味わえるので、そういうのが好きなら読んでみるといい。楽しゅうございました。
*1:例:本書○○頁/2行目~3行目 → レイモンド・チャンドラー 双葉十三訳『大いなる眠り』創元推理文庫(東京創元社、一九五九年)76版、189頁