岬鷺宮 『日和ちゃんのお願いは絶対3』 (電撃文庫)

そのとき――わたしの胸に意志が宿った。

それまでのんびり生きてきたわたしが、初めて心から強く願った。

――ゼロにする。

この世の地獄を、完全に消し去ってやる。

「日和は――〈天命評議会〉を抜けます」。〈天命評議会〉の活動の中で日々心をすり減らし続けていた日和。見かねた深春は、日和を〈天命評議会〉から抜けさせる。衰えてゆく世界の中で、訪れた平穏な日常。しかし、やがて世界の情勢は狂いはじめ、二人の関係にも亀裂が生じようとしていた。

「知識を受け継いでくれ。知識の手に入れ方を、論理的な思考や抽象的な思考の仕方を、受け継いでくれ。俺達にできる精一杯はそれだけだし、きっとそれが君達の未来に、欠かせないものになるはずだ」

数十億人を守るために十二万人を殺した少女は、彼と世界を秤にかける。世界の命運を握る彼女との、ほんのひとときの穏やかな日常のはじまりとその終わりを描く、由緒正しきセカイ系恋物語、第三巻。異常気象による故郷の土砂崩れ、収束しつつあったはずなのに、強毒化し突如感染者が増え始めたウイルス禍、電気や通信網といったインフラの衰退。2021年現在の世界の状況で、真面目にこれを書いたのだとしたらたしかに病むだろうし、最高に趣味が悪いとも言える。すべての登場人物が、それぞれのできるレベルで真摯に世界の終わりに立ち向かっているのが救いと言えるか。この露悪さと、ある種の懐かしさ(というか既視感というか)を感じる作風は読者を選ぶのかもしれない。個人的にはとても良いと思っています。



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