香坂マト 『ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います2』 (電撃文庫)

今までは、ひどい残業地獄が続いてもその原因となるボスをどうにかしてしまえば解消できた。例えばそのボスを倒すのが、冒険者じゃなくてもいい。残業に疲れたどこかの受付嬢が怒りのままにボスをぶち殺しても、結果的に繁忙期は終わるのだ。

だが今回は違う。殺すべきボスも攻略を終わらせるべきダンジョンもない。いつもの力業は通用せず、デマなどといういつ収束するかもわからない理由によって、この鬼のような繁忙期にいつまでも付き合わなければならないのだ。

イフールの町に、年に一度の百年祭が近づいていた。ギルドの受付嬢三年目のアリナは、毎年残業に忙殺され、祭に参加したことがなかった。今年こそは仕事を終わらせて当日は定時で帰って祭に参加するのだ。決意を新たにするアリナだったが、デマに踊らされた冒険者たちがギルドのカウンターに連日押しかける。

平穏に暮らしたいギルドの受付嬢を根拠のないデマが襲う! 強い女性主人公の系譜にあるファンタジー。突如として広まったデマがギルドの窓口業務を圧迫し、果ては世界を危機に陥れる。フィクションにおける時事ネタのリアリティが変わったのか、単に受け取る自分の問題か。

キャラクターの過去やこの世界を掘り下げることで、物語世界そのものの掘り下げに大きく成功していると感じた。一発ネタのようだった一巻からこんなに面白くなるとは想像できなかった。これだったらずっと追いかけられる。続きも楽しみにしています。



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