ああ、それが夢ならば、どんなに良かっただろう。
ベッド脇で、『彼女』を見下ろし、僕は胸が締め付けられる。
ジークフリーデ・クリューガー。
彼女のあるべき場所に、あの逞しくも美しい両腕は、もう肘から下が存在しない。
女王ロザリンデの凶行を止めるため、眼帯の騎士ジークフリーデはその腕を捧げる。ジークフリーデに守られた旅の魔術師オットーは、彼女の治療とリハビリに日々努めていた。義手を手に入れたジークフリーデは、大粛清を再び起こさんとするかつての主にして愛する人に再び立ち向かおうとしていた。
乱世の時代、強い女の掲げる騎士道と、強い女たちの百合が真っ正面からかち合う。第1部との前後編となる、「『二人の少女たち』の物語」。だいぶ圧縮がかかったのか、終盤かなりの駆け足になっている。平仄は合っていると思うのだけど、物語や感情の溜めが少ないぶん、ならではの特徴が薄くなっていた。二冊でしっかりまとまってはいるものの、もっと書ける作家だと思うので、もったいない気持ちのほうが強いかなあ。
kanadai.hatenablog.jp