どうしてなんだ。
どうしてみんな、そんなに何も考えないで生きていられるんだ。
カウンセリングルームの引きこもり、明神凛音は真実しか解らない。クラスメイトの伊呂波透矢は、神の啓示を受けるかのように無意識で真実にたどり着いてしまう凛音の論理を推理したり、日常の世話を焼いたりしていた。ある日迎えた臨海学校で、ふたりは深夜に密会していた疑惑を押し付けられる。
謝罪することが重要なんじゃない。
そういうことがあると、知っていること。
誰かを傷付ける可能性を、頭の中に持っておくこと。
そうすれば、次は気を付けられる。
スポイルされた、易きに流れる、何も考えない人間にはならないでいられる。
臨海学校で対峙するのは、35人の嘘つきと、ひとりの正直者。「本格ラブコメ×本格ミステリ」の第二巻。本格ミステリとしての完成度は非常に高く、その上で三角関係を押し出したラブストーリー分も恐ろしく濃密。情報の密度が胸焼けしそうなくらい濃いのに、びっくりするくらい読みやすい。語りのスタイルは「継母の連れ子が元カノだった」や「転生ごときで逃げられるとでも、兄さん?」と共通しているのだけど、ミステリを書く上でこれ以上ないほど活かしていると思う。
弁護士志望の主人公だけあって、単に謎を解くだけではなく、法や倫理(あくまで最小限の)を念頭に置いて考え悩み、人間についてままならないもどかしさに懊悩しているのがとても良い。それにしても、モリアーティみたいなゴリゴリの敵役が出てくるとは思わなかったし、チビギャルさんこと紅ヶ峰もかわいい。この作者の描くサブキャラクターはどれもほんとに魅力的。ラブコメ好きも本格ミステリ好きも読むといい。傑作です。
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