鶏卵うどん 『僕たちはまだ恋を知らない ~初恋実験モジュールでの共同生活365日~』 (MF文庫J)

歳を取って思い出し、「あの一年」が自分の人生を決定づけたと確信できる一年が誰にでもあるのだそうだ。

そして僕にとっての「あの一年」は、間違いない。

第18局地用居住モジュール長期滞在実験に参加するため、北海道の原野に建てられた白い方舟(ノアズアーク)の中で過ごした十二か月だ。

北海道の原野に建設された第18局地用居住モジュール。共同生活実験として、選抜された六人の学生がここで一年間を過ごすことになる。モジュールに到着した参加者の高校生、鳩村光は、その場で他の参加者五人が全員女子だということを知る。

五人の女子と一人の男子の共同生活実験、期間は一年、報酬は奨学金と好きな大学への進学。ただしモジュール内恋愛は即追い出しの、「密着閉鎖系ラブコメ」。ストーリーの前提となる導入が楽しい。米中の宇宙開発競争に伴い、局地居住モジュール研究激化、JAXAも米について共同参画 → 米大統領の交代で宇宙開発予算終了、JAXAの研究チームも解散 → その15年後、居住モジュール研究再開、ただし管轄がなぜかJAXAから内閣府直属になり、世論に不信感 → 新型ウイルス蔓延……。

SF的なつかみと、叙述トリックめいた仕掛けで引きつけつつ、基本的にはハーレムラブコメらしいものを詰め込んだ無難な導入と言えようか。ふしぎなわちゃわちゃ感があって悪くない。続きを待ってます。