逆井卓馬 『豚のレバーは加熱しろ(5回目)』 (電撃文庫)

「生きるのはとてもつらいことです。しかし、死んでしまってから生きたかったと願う方が、もっともっと、つらいことなんですよ」

闇躍の術師に乗っ取られた王と王国を奪還しなければならない。解放軍と王子、少女たちと豚たちは、メステリアの内蔵とも言えるもうひとつの世界があるという北端の孤島、最果て島に向かう。闇躍の術師を打倒するためには、誰かがこの「深世界」に潜入しなければならない。

一冊の本を手に、見たこともないような数の星が散らばる世界の中を、南を目指して進む。そして、誰からも愛されなかった最強の王の最期。副題をつけるなら「豚世界ピクニック」かしら。恐怖や狂気とはまた別のアプローチで、もうひとつの世界がある、ということを描いていた。

豚と美少女のファンタジーと言いつつも、伏線と謎を効かせたミステリ的な描き方はシリーズに共通している。作者自身があとがきで書いている通り、振り幅の大きさが、シリーズを作るにあたって良い方向で効いているのだと思う。おそらく未読の方が想像するより、ずっと骨太なファンタジーになっているはず。今回も良かったです。