夏目純白 『純白と黄金』 (MF文庫J)

「これは?」

「黒淵の歴代ヤンキーだよ。功績を残した最強のヤンキーが、ここに名前を刻んで卒業していくんだ。もちろん、私の師匠の名前もある」

「ヤンキーの功績……」

って、なんだろう。

《純白の悪魔》。ヤンキーの聖地、東北で100人のヤンキーを叩きのめしたシャツに、返り血ひとつなかったことからそう呼ばれるようになった、伝説のヤンキー。全国に名を轟かせた彼は、ある日姿を消した。時は流れ、ヤンキー全盛時代。六つの高校が覇を競う東京都猫丘区に、ひとりのオタクが現れる。

現代では珍しいヤンキー小説? のようななにか。初めは説明的でいまいちかな……と思いながら読んでいたのだけど、独特の言語感覚と物語の方向性を飲み込んでいくうちに楽しくなっていった。「教師による会議室の支配は一年前に終わった」だの「牢教室」だのヤンキーの魂を鎮めるヤンキー墓地だのヤンキー専用SNSだのと、つまりヤンキーが出て殺すやつだな? ツッコミを置かないまま淡々と、とんでもないアクションと設定が当たり前のように開陳されていく。おそろしく癖が強いので広く勧めるのは考えちゃうけど、良かったです。