立川浦々 『公務員、中田忍の悪徳3』 (ガガガ文庫)

「話は戻るんですが、結局アリエルは『流れで“異世界エルフ”って呼んでるけど、実はよく分からない謎の異世界生物らしき何か』ってことでいいんですよね?」

「そうなるな。必要なら、今からでも呼び方を変えるか」

「一応確認しますね。なんて?」

「UMA」

「は?」

街に連続発生した謎の紋様と、アリエルが書いた奇妙な“魔法陣”。そこに共通する意味を見出した忍は、もし新たな異世界エルフが現れたとしても、一切関わりを持たないと宣言する。時は年の瀬、12月30日。地域のパトロールに参加した忍は、二人目の異世界エルフに遭遇する。

異世界エルフとのコミュニケーション方法を引き続き探る日々、そして二人目の異世界エルフとの邂逅。なるほど、SFとファンタジーのどちらにも寄せないファーストコンタクトは子育てに似るということか。バーバルコミュニケーションさえできれば問題が解決するとは限らない、という説明には理屈以上の説得力を感じる。

正義と悪徳、信義と倫理、現実と(本当にあるかもあやふやな)異世界といったテーマを、理屈をこね回した考察と、地に足の着いた解釈の両極端で語り、考える。このエルフは「本物」なのか? そもそも「本物のエルフ」って何? みたいな話も楽しい。そこから忍のパーソナリティーを掘り出してゆく手付きも見事。引き続きたいへん良かったです。作品全体のテーマではあるけど、「弱者」を描く中盤がかなりきっついので注意をしてほしい。