喜多川信 『ソレオレノ』 (ガガガ文庫)

「なあ、信じられるか?」

リョウはナツメヤシの葉の上に腰を下ろし、いつものように友人に話しかけた。

「俺が大陸一の冒険者で、虫使いで、王様にまで頼られていたなんて……集めた古代遺物のコレクションが数え切れなかったなんて……」

かつて大陸一の冒険者と呼ばれていたリョウ。信頼していた王エンと仲間たちに裏切られ、岩窟牢に囚われてから長い時間が経っていた。脱獄の手段も潰え、諦めかけたその時、王の娘を名乗る少女センが、古代遺物の虫樹を駆ってリョウの目の前に現れる。

牢に囚えられすっかりおっさんになった冒険者は、かつての仲間への復讐と、世界を救うための旅に出る。独自の宗教観を持った渇ききった世界、古代遺物の巨大虫型マシン、助けを求めて現れた裏切り者の娘、かなり独特なネーミングセンス。ガジェットを散りばめた、ロボットアニメのようなストーリーラインは悪くない。個人的には今ひとつ乗り切れなかったのだけど、ロボットアニメのような小説を求める向きにはいかがでしょう。