両生類かえる 『海鳥東月の『でたらめ』な事情2』 (MF文庫J)

「100本の内、どれが『本体』というわけでも、どれが『本体でない』というわけでもありません。あくまで鉛筆が100本集合した存在、それが私なのです。

ですからのこの内の1本や2本が折れたり、燃やされたりしたところで、私自身にはなんのダメージもありません……つまり私という存在は、鉛筆というよりも、『100本の鉛筆という概念そのもの』と表した方が、より正確に近いのかもしれませんね」

ゴールデンウィーク真ん中の5月3日。バイト終わりの海鳥東月に非通知の電話がかかってくる。電話の主は、東月がマンションの裏に土葬した100本の鉛筆だと言う。

素揚げされた末に土葬された100本の鉛筆が自我を持ち、埋めた主に語りかけてくる。それは、一年前に出会ったサラダ油の屋台引きの願いが起こした奇跡だった。嘘を吐けない少女の周りに集まる《嘘憑き》たちの「でたらめ」な嘘殺し、第二巻。普通に奇想と呼んでいい導入だと思う。一巻も導入はともかく、尻すぼみ感が強かったのだけど、話の広げ方たたみ方とも格段に良くなっていた。アイデアややりたいことにアウトプットが追いついた印象というのかな。小説の焦点を絞った結果、メインヒロイン(?)の出番が犠牲になっていたのはまあ、そういうものだろう。今後がぐっと楽しみになりました。



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