逆井卓馬 『豚のレバーは加熱しろ(6回目)』 (電撃文庫)

もともと運命などというものは信じない性質だったが、この世界に来て、一つ学んだことがある。人の祈りに世界を変えるほどの力はない。しかし、世界が変わるとき、そこには人の祈りがあるのだ。様々な庵が人を動かして、世界を少しずつ、祈りの先へと方向づけている。

俺はそれを、運命と呼んでもいいのではないかと思っている。

最凶の魔法使いを打倒し、王都奪還に成功したものの、王と王弟はこの世になく、世界は深世界と融合したまま。イェスマたちの処遇もあり、王座を継承したばかりの若き王の背中には大きな荷物が伸し掛かっていた。

イェスマを解放するための「最初の首輪」を探すジェスたちの前に、不気味な連続殺人事件が立ちはだかる。シリーズ六巻は、わらべうたになぞらえた見立て連続殺人事件と、なんかそれっぽい探偵ごっこ。それがファンタジー世界を決定的にぶっ壊すラストにつながる。いやいくら振り幅が大きいったって、そんなん想像できるわけがないじゃないか! っていう。わりと自由にわちゃわちゃやっているのだけど、いつか破裂するであろう暗い不発弾が常に足元にあるのだ、みたいなことを意識させるストーリーテリングはしっかりしている。前も書いたけど、ミステリ的な語り方、なのかな。読み終わってテンションが上がってしまった。素晴らしく良かったです。