周藤蓮 『明日の罪人と無人島の教室』 (電撃文庫)

「そう、『明日の罪人』というのは、技術に裏付けられた最も強い孤独の定義だ」

殺されたくないと思わないから、殺す。

盗まれたくないと思わないから、盗む。

価値観からの隔絶。頭で考えても、耳で聞いても、僕たちには実感できない何かがある。社会性からかけ離れた孤立した完成を抱えているから、僕たちは将来絶対に罪を犯す。

現実規程関数によって、現実には限られた可能性しかないが証明されてから十五年。「将来絶対に罪を犯す子供たち」こと12人の《明日の罪人》は、無人島での隔離更生プログラムに参加を強制される。罪なき咎人たちに課せられたのは、一年間の共同生活を通じて、己の将来の潔白を証明すること。

「『理解できない』『理解されない』『共感できない』『共感されない』。孤独の四つの形。それがボクたち。孤独がボクたちを罪へと駆り立てる」

その言葉は、僕の胸にすとんと落ちた。

「現実規定関数」から導き出された《明日の罪人》たちは、共同生活の中で未来の潔白をどのように証明できるのか。あとがきで冗談交じり(?)に「これはSFです」と表明しているけど、一貫して「価値観」を自覚的に描いている(と自分が勝手に思っている)作家が、それをSFを使って描くとこうなるのか、と思わされた。「現実規定関数」という技術が「将来必ず罪を犯す子供」を決めるというとんでもない導入にもしっかりとした意味があり、舞台が近未来(できることは増えているけど技術的に限界がある)であることも、「価値観」の物語を描く上でしっかりとした意味がある。登場人物が15人は居るのに、書き分けやキャラクターづけもくどくない程度にはっきりしていて非常に読みやすい。ものすごく考えぬかれた、最高の導入ではないかと思いました。