伊崎喬助 『董白伝 ~魔王令嬢から始める三国志~5』 (ガガガ文庫)

「俺と異民族のガキが似てる? 半分羌族の親から生まれたお前は知らねェんだろうけどな、種類の違う人間同士には越えられない一線があんだよ! この山みてェに、山ン中の桃の林みてェに! それに――」

――少年だった自分が越えられなかった、あの花畑のように。

sれを言葉にはできなかった。口にすれば、本当に何かが終わってしまう気がした。

孫家との共闘によって呂布を退けた董白。だが、孫堅は何者かに暗殺され、そこに息をつく暇もなく不気味な動きをした曹操が進軍してくる。さらには劉備たち義兄弟も動きを見せる。一方、再起不能の傷を負った呂布は、異民族の集落で不思議な子供に命を救われる。

未来の知識で頑張る転生幼女、董白ちゃんの三国志、これにて一旦完結。同じく未来の知識を手に入れて、ただでさえ恐ろしいのにチート化してしまった曹操。最後まで秘密が明かされることのなかった劉備、関羽、張飛の三兄弟。天下無双の称号を捨て、ぼろぼろになった身体で最期の復讐に命をかける呂布。石兵八陣を操る「東アジアでもっとも有名な軍師」。生と死が紙一重の三国時代や、英傑たちのぞっとするほどの迫力と、それをつくるための知識と構成力、描写は本物だった。作中で唯一、馬超だけ性別が転換していた理由もうまくて感心した(というかそんなの知らなかった)。それだけに、描ききれていない伏線や明かされずじまいの謎が数え切れないくらい残っているのがもったいなさすぎるよ……。望みは薄いだろうけど、いつか第二部が読める日が来るといいな。今後も引き続き応援しています。