人間六度 『永遠のあなたと、死ぬ私の10の掟』 (メディアワークス文庫)

あなたの体は決して老いることはない。

でもあなたの心は、一緒に老いることができる。

平成の終わりごろ。大学生の真昼は、床無霧人という青年と出会い、あっという間に恋に落ちる。不老不死の身を持ち、数百年の時を生きてきた霧人は、付き合う条件として真昼に「十の掟」を課す。それから六十年の時間が経とうとしていた。

永遠に生きる青年と、普通に老いていく女性の、長きに渡る恋物語。……であるのは間違いないのだけど、変な小説だった……。不死身の人間たちが作ってきたもうひとつの社会、そして人間が不老不死になる条件とは。なんでもかんでも詰め込むせいか、思わぬ方向に話がドライブするんだけど、着地点は比較的穏当なところに落ち着く。この不思議な読み口が作家性というやつなのかもしれない。

『スター・シェイカー』の作者が担当編集に「お前らしさを見せてくれ!」と言われて書いた小説がこれなのは非常に納得できる。『スター・シェイカー』あるいは『きみは雪を見ることができない』が気に入ったのであれば、ぜひ読んでみてもらいたい。繰り返すけど、変な小説でした。



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