二語十 『探偵はもう、死んでいる7』 (MF文庫J)

「ヒトは強大な悪と戦っている自分に陶酔する。たとえその悪に屈しようと、自分たちはよく戦ったのだと声高々に慰め合う。己の願いが叶わないのも、この世界そのものが敵ならば仕方がないと納得できる」

《世界の危機》が去って一年、恒久的な平和が訪れた世界。君彦、シエスタ、渚の三人は大学に通いながら探偵事務所を設立し、探偵として活動していた。そんなある日のこと、事務所に《連邦政府》から一年ぶりの連絡が届く。

静かに忍び寄る《未知の危機》から世界を救うため、《名探偵》たちが再び戦いに赴き問いかける。闘争も犠牲も厭わぬ無欠の正義か、悪の存在を許容する妥協的平和。世界はどちらを選ぶべきなのか。そも、悪とはどこから現れるものなのか。シリーズのエンドロールにして、新たな始まりとなる第七巻。

成長した(存命の)登場人物たちが順を追って総登場する流れから、劇場版アニメを意識したのかなと思いながら読んでいったら、そのクライマックスで、シリーズのすべてをひっくり返しにかかってくるという。この仕掛けそのものはそう珍しいものではないと思うのだけど、七巻まで来たシリーズでこれをやるのは、なかなか勇気がいるのではなかろうか。割と好き勝手やってきたシリーズではあるけど、作者も修羅の道を往くなあというか。なんだかんだ楽しみにしています。