このお店はモザイクガラスみたいだ。雑然としていて、きらきらもしている。
まさしく不思議の国のようだけれど、一向に夢から覚める気配はない。
ミナミコアリクイの店主が営む喫茶店兼ハンコ店、有久井印房。今回のお客様は、ロボットのように感情のないバリスタ、二人の姉に悩まされる末っ子、そして大家さん。
川沙希は望口を舞台にした、不思議なお店のシリーズ四巻。語り手の変わる章ごとに、語り口だけではなく、それぞれが見ているものへの解像度まで変わるのがほんとうにうまいし、それぞれの話にはんこを自然に絡めるのも見事。ミステリ仕立ての少し不思議な優しい人情噺、すっと引き込まれるようでした。