明治サブ 『腕を失くした璃々栖 ~明治悪魔祓師異譚~』 (スニーカー文庫)

少女リリスが手帳を覗き込み、「璃、とは?」

「宝石。瑠璃玻璃の璃です。偏には王の意味もあります」

「栖、は?」

「特に意味はありませんが、ルイス・キャロル著『不思議ノ国ノ有栖』と同じ字です」

「あはァッ、良いな。気に入った! 予は、この国では璃々栖と名乗ることとしよう!」

両腕のない少女の悪魔リリス――否、璃々栖が、嗤った。

明治36年、神戸外国人居留地。13歳の少年悪魔祓師(エクソシスト)、皆無は所羅門(ソロモン)七十二柱の一柱、不和侯爵庵弩羅栖(アンドラス)の襲来によって命を落としかける。皆無を救ったのは、両腕のない少女リリス・ド・ラ・アスモデウスの口づけだった。

第27回スニーカー大賞金賞受賞。明治36年11月、観艦式を前にした神戸で、悪魔祓師(エクソシスト)の神童と両腕のない大魔王が出会う。ボーイミーツガール、というかおねショタというか。明治時代の神戸、真言、仏教、キリスト教、カバラ、与謝野晶子と、様々な素材を少年漫画チックにガーッとノンストップで調理した感のあるアクションエンターテイメント。作中で主人公が精通を迎える小説もわりと久しいし、その後に雰囲気が一変するのも楽しい。ルビを多用したテキストや洒落たセリフもサクッと読めるし、突っ込もうと思えば突っ込める。気持ちよいアクション小説でした。