立川浦々 『公務員、中田忍の悪徳5』 (ガガガ文庫)

間違えてはいけない。

そもそも中田忍は、本物の真面目な地方公務員などではない。

本当に真面目な中田忍が、たまたま地方公務員になっただけ。

忍を動かせるのは公務員としての高尚な奉仕の精神ではなく、己自身の信義なのである。

謎の力で戸籍が与えられ、徐々に文字を理解しつつある異世界エルフのアリエル。秘密裏の保護者たる中田忍は、アリエルを現代社会で生きられるよう、周囲の仲間たちを巻き込み行動を開始する。社会性と日本語を急激に吸収して理解するアリエルは、己の出自をその口で語り始める。

弱者にはとことん厳しい現代社会で、異世界エルフが生きるために必要なこととは。そして、ついに異世界エルフことアリエルの出自が明かされる第五巻。ファーストコンタクトだと思って読んでいたけど、まさかこういう話になるとは思ってなかった。言葉を手にしたあとに、最初に交わした言葉「ボベャルカッアッツロヌ」に戻るのがとても良い。というかそもそも意味がある言葉だなんて思わないよ! 大人と子供、現代日本と異世界、社会とそのはみ出しものを対比させた物語と、なんだかんだとトンチキさを忘れない語りのバランスもますます磨きがかかっている。本当に良い物語だと思います。