逆井卓馬 『豚のレバーは加熱しろ(7回目)』 (電撃文庫)

「世界は、変わってしまうのは一瞬なのに、変えていくのには途方もない時間がかかります。お豚さんたちは、それを変えようとしているのでしょう。とても立派なことです」

新国王シュラヴィスは、招待移住(ジノーキス)と称して解放されたイェスマたちを城内へと、半ば強制的に集めはじめる。シュラヴィスから面会すら許されず、その真意をつかめない豚とジェス。なんとか王に会おうとするふたりの前に解放軍の少女セレスが現れ、「自分を殺してほしい」と訴える。

王朝軍から追われる身となった豚一頭と美少女ふたり。逃避行の行方は、王の真意は、そして王朝軍と解放軍の戦いと、超越臨界(スペルクリッカ)で変わってしまった世界の行く末はいかに。アニメ化も発表されたファンタジーの第七巻。豚の皮をかぶったはいるけど、裏切り、悲恋、偽りの民族融和、血統のもたらす狂気と悲劇、といった要素をミステリの文脈で描く、土台のしっかりしたダークファンタジーですよ。あとがきの「某社にも色々あったようですが」とはどこのことを言っているのかな? タイトルその他で損している部分はあると思われるけど、もっと読まれていい小説だと思っております。



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