悠木りん 『星美くんのプロデュース vol.1 陰キャでも可愛くなれますか?』 (ガガガ文庫)

「ボクは、誰かの『可愛くなりたい』って気持ちを絶対に笑ったりしない。だって、それってすごく勇気のいることだって、分かってるから」

自称“最強に可愛い”女装男子、星美次郎。周囲には秘密のまま、女装して渋谷や原宿を歩いていた彼だったが、ある日隣の席の陰キャ女子、心寧四夜に正体がバレてしまう。心寧は、秘密を守る代わりに自分を可愛くしてほしいと条件を出す。

これまで僕が心寧にかけてきた言葉は、全部、僕がほしかった言葉だ。

『可愛くなれる』も『着たい服を着ればいい』も『似合ってる』も、全部ぜんぶ。

誰かに言ってほしかった。その言葉で、この身の内で僕自身が僕を否定する声を、かき消してほしかった。

僕は、僕を肯定したかった。

“最強に可愛い”ことに自負を持つ女装男子、化粧もしたことのない陰キャ女子にファッションやメイクを伝授する。陰キャ女子を“可愛く”するプロデュースの日々を描くラブコメ。女の子の格好でいっしょに服を選んだり、メイク講座を開いたり。メイクやファッションの描写はシンプルでありつつ非常にキュートで、解像度はかなり高いと思われる。まったく対照的なふたりのやり取りはコミカルで、すいすいと読ませられる。

生きたいように生きることと「普通に生きる」ことの間にあるギャップだったり、そんな人生における自己肯定感の意味だったりを、キャッチーかつコミカルに浮き彫りにしていたと思う。直接関係ないけど、「ミモザの告白」と「星美くんのプロデュース」が同じレーベルで同じ月に出るのいいですね。続きを楽しみにしています。



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