二語十 『探偵はもう、死んでいる。8』 (MF文庫J)

ああ、そうだったと思い出す。

だから私は。リリア・リンドグレーンは、目指したんだ。

画面の向こうの魔法少女の名を借りて、正義の味方になることを。

これは、シエスタが眠りについてから三ヶ月後の話。君塚君彦は、《調律者》の一人にして《魔法少女》、リローデッドから「使い魔」に指名され、ともに《百鬼夜行》を退治する非日常の日々を送っていた。《世界の敵》とたったひとり戦い続ける《魔法少女》には、ある目的があった。

過去の災厄の記憶を振り返り、書き換えられた全人類の記憶を検証する過程で語られる、ある《魔法少女》の過去と未来の物語。大切なものが両手に抱えきれないくらいできてしまったなら、それ以上手を伸ばすにはどうすればいいのか。手に届く範囲のものしか守れない者が正義の味方を名乗ることができるのか。「正義の味方」をフィクションで語るときにはよくあるテーマではあるけど、非常に理想的で、ならではの回答を導き出していたと思う。

カバーイラストと最後のモノクロイラストが対になっているのが美しい。いくつもの謎と伏線をはちゃめちゃにばらまいた無茶苦茶な一冊であり、ひとつのエピソードに決着をつけた、きれいな一冊でもあったと思います。