彩月レイ 『勇者症候群』 (電撃文庫)

人間と《勇者》が分かり合うことなどありえない。

《勇者》とは無辜の民を滅ぼすものだからだ。

世界を滅ぼす力、《勇者》。それは、謎の生物「女神」に寄生された夢見る少年少女が変貌した怪物。《勇者》は夢に包まれたまま、眼の前にいるのが人間だと知らぬまま、己の世界を守るために正義を振るう。

第29回電撃小説大賞金賞受賞作。最前線で《勇者》と戦う少年少女たちの勇者殲滅部隊「カローン」の戦いを描く。現代日本に現れた異能者たちの戦いに、転属を命じられた研究者の少女と最前線の兵士たちの価値観の衝突といったベタなところや、少ない予算の取り合いにと、いかにも現代的に過不足なく書いていたと思う。劇団イヌカレーによる《勇者》デザインと、イラストの差し挟み方も完全に「劇団イヌカレーの怪獣図鑑」だった。「王道」と「陳腐」のキワにある物語ではあったけど、悪くなかったと思います。