髙村資本 『恋は双子で割り切れない5』 (電撃文庫)

横断歩道を渡ると、純が「あの時は確か那織も居て、文句を言いつつも何だかんだで付いて来て、結局いつも通り三人で喋りながらだらだらと歩いたんだよ」と言った。

いつも通り、ね――前だったらそうだったけど、今は違う。

もう三人はいつも通りじゃない。いつも通りにはしたくない。

昔の通学路を歩いているのは、今のわたしと純だけ。「あったね、思い出した」

7月24日、僕の誕生日。幼い頃から家族も同然の付き合いだった双子、琉実と那織と三人で横浜に遊びに出かけていた。だけど、この関係ももうすぐ終わる。今日僕が想いを告げるから。

告白、夏の海、初恋の決着を描いた第五巻。百合SFアンソロジーや「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」Tシャツが特に脈絡もなく出てくるような小説であれば必然の着地点だったかもしれない。それ以外の引用出典も相変わらずしっかりしている。女の子たちだけの買い物の様子だったり、キャッキャウフフしながらもやけに時間がかかって面倒くさいところを、十分な尺を取ってぜいたくに描いている。とりあえずまだ続くということだけど、周辺のキャラの掘り下げをしていくのかな。引き続き期待しています。