両生類かえる 『海鳥東月の『でたらめ』な事情4』 (MF文庫J)

「だってお前、知らないでしょう?」

でたらめちゃんは鬱陶しそうにいう。「私が今日まで、どれだけ自殺したいと思ってきたか。どれだけ生に絶望して、どれだけ死を渇望してきたか」

ある秋の日、でたらめちゃんに連れ出されてお出かけした海鳥東月。でたらめちゃんは東月にどうしても伝えなければいけないことがあるという。その裏で、《泥帽子の一派》の中核メンバーが神戸に集まり、何かを起こそうとしていた。

でたらめちゃんが生まれた10年前の出来事、《嘘憑き》たちの祭り。シリーズのクライマックスとなる第四巻。読むたびに言っている気がするけど、アイデアが奇想小説のそれだと思うのよな。作者自身は「社会性のある変人」がこの小説のテーマだと書いているけど、想い人の使った鉛筆を素揚げで食う女(主人公)だとか喋るサラダ油だとか同担拒否の貨幣性愛者(マネーフィリア)とか出しといて、それで済ませていいんだろうか。畳みきれないまま息が切れてしまった感もあるのだけど、ここで終わってしまうのはかなりもったいない。このへんてこなアイデアの数々、届くべきところに届いてほしいな、と思った次第です。