てにをは 『また殺されてしまったのですね、探偵様 5』 (MF文庫J)

生きたままバッサリ首をちょん切られるなんてことはそう多くの人ができない経験だとは思うけれど、あれを言葉で表現するのはちょっと難しい。

意外と痛みはない。脳がそれを拒否しているんだろう。

それに恐怖もそれほどない。

けれどその代わりに――なんて言うか、とにかく切ないんだ。

自分自身と縁が切れるような切なさだ。

屈斜路刑務所から脱獄し、体を乗り換えて追月探偵社に転がり込んできた《最初の七人》(セブン・オールドメン)フェリセット。彼女(?)の持ってきた父、断也の伝言「遠からず世界はオカルトとロジックが入り混じる」の真相を求め、オカルト考古学者を名乗る母、薬杏を探して横浜の廃教会を訪れる。

女子小学生と化した大犯罪者とともに挑む脅迫事件。そして「オカルトとロジックが入り混じる」という言葉の真相とは。話が一気に広がった感のあるシリーズ第五巻。「殺されても生き返る探偵」の使い方が巻を追って上手くなっていくのが本当に良いね。出落ちかと思っていた最初の頃から、印象がずいぶん変わった。今回は特に、息子がそういう体質だったことを知った時の母親の心境が書かれるのが良かった。普通は生き返らないし、何度も死なないからね。けれん味の効いたシリーズだからこそ、素直な心情が強く印象に残ったのかもしれない。ミステリでありエンターテイメントであり、とても良いと思います。